肥満
高血圧でEDになるのはなぜ?降圧薬の影響とED治療薬を使えるかを解説
「血圧の薬を飲み始めてから、なんとなく調子が悪い」——高血圧の治療中にEDを自覚し、薬のせいではないかと感じる方は少なくありません。
実際、高血圧とED(勃起不全)には深い関係があります。しかもその原因は「高血圧そのもの」と「降圧薬の副作用」の2つに分かれるため、対処法も変わります。この記事では、なぜ高血圧でEDが起きるのか、降圧薬の種類ごとの影響、そして血圧が高くてもED治療薬を使えるのかを整理します。
この記事のポイント
・高血圧の人はEDのリスクが約2倍という報告がある
・原因は「血管のダメージ」と「降圧薬の副作用」の2系統
・降圧薬の種類によってEDへの影響は大きく違う
・「高血圧だとED治療薬は飲めない」は誤り。血圧が管理できていれば使えることが多い
・ただし硝酸薬(狭心症の薬)との併用は絶対に不可
・降圧薬の自己判断での中断は、脳卒中・心筋梗塞のリスクを高める
高血圧の人はEDになりやすい
複数の研究で、高血圧のある男性はEDのリスクが、血圧が正常な人のおよそ2倍と報告されています。高血圧の患者を対象にした調査では、約7割に何らかのED症状がみられ、そのうち一定の割合が重度だったという報告もあります(研究により数値には幅があります)。
さらに、血圧のコントロールがうまくいっていない人ほどEDの症状も重くなる傾向、高血圧の期間が長いほどリスクが上がる傾向が指摘されています。
EDそのものの定義や分類については、EDとは?症状・原因・治療法をわかりやすく解説で整理しています。
なぜ高血圧でEDになるのか|3つの理由
① 血管の内側が傷つき、血管を広げる力が落ちる
勃起は、性的刺激を受けたときに陰茎の血管が広がり、海綿体というスポンジ状の組織に血液が流れ込むことで起こります。つまり勃起は血管の働きそのものです。
高血圧の状態が続くと、血管の内側を覆う内皮細胞が傷つきます。すると、血管を広げる働きをする一酸化窒素(NO)が十分に作られなくなります。これを内皮機能障害といいます。必要なときに血管が広がらないため、十分な血液を送り込めなくなります。
② 動脈硬化で血流が悪くなる
高血圧が続くと、血管の壁にコレステロールなどが蓄積し、動脈硬化が進みます。動脈硬化は全身で起こりますが、細い血管ほど先に影響が出ます。
陰茎へ血液を送る動脈は直径1〜2mm程度と、心臓の冠動脈(3〜4mm程度)よりも細いことが知られています。このため、心臓や脳よりも先に症状が現れやすいのです。
EDは心血管疾患の「早期警告サイン」になり得る
ED症状が現れてから狭心症などの症状が出るまでが2〜3年、心筋梗塞や脳卒中といった心血管イベントまでが3〜5年と推定した研究があります。
つまりEDは、「まだ症状が出ていない血管の異常」を先に知らせてくれている可能性があります。
③ ホルモン・自律神経の影響
高血圧に肥満やメタボリックシンドロームが重なると、男性ホルモンであるテストステロンの分泌が減る可能性が指摘されています。また、慢性的なストレスや睡眠不足もホルモンバランスを乱す要因になります。
同じ生活習慣病でも、糖尿病は神経障害の関与がより大きくなります。詳しくは糖尿病でEDになるのはなぜ?原因・仕組みと改善・予防法で解説しています。
降圧薬の副作用でEDが起こることもある
もうひとつの原因が、血圧を下げる薬そのものです。薬剤性EDは全体の約2割を占め、降圧薬はその主要な原因のひとつとされています。
ただし重要なのは、すべての降圧薬がEDを起こすわけではないということです。種類によって影響は大きく異なります。
| 薬の種類 | EDへの影響 | 主な成分名の例 |
|---|---|---|
| チアジド系利尿薬 | 影響が出やすいとされる | ヒドロクロロチアジド など |
| 従来型のβ遮断薬 | 影響が出やすいとされる | プロプラノロール、アテノロール など |
| カルシウム拮抗薬 | 影響は少ないとされる | アムロジピン、ニフェジピン など |
| ACE阻害薬 | 影響は少ないとされる | エナラプリル、イミダプリル など |
| ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬) | 影響は少なく、改善する可能性の報告もある | ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン など |
知っておきたい「思い込み」の影響
降圧薬とEDの関係には、心理的な要素も強く関わっていることが分かっています。
β遮断薬を使った研究で、薬の名前も副作用も知らされなかった群のED発現率は3.1%だったのに対し、「この薬にはEDの副作用がある」と説明を受けた群では31.2%に達したという報告があります。約10倍の差です。
これは「副作用は気のせい」という意味ではありません。不安そのものがEDの引き金になり得るということです。だからこそ、自己判断で結論を出さず、実際に何が起きているかを医師と確認することに意味があります。
【重要】降圧薬を自己判断でやめないでください
「この薬のせいだ」と考えて降圧薬を自分の判断で中止すると、血圧のコントロールが崩れ、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気のリスクが高まります。
EDは生活の質に関わる問題ですが、高血圧の放置は生命に関わります。優先順位を取り違えないでください。
降圧薬の影響が疑われる場合、医師に相談すれば次のような選択肢を検討できます。
- EDへの影響が少ないとされる種類(ARB・カルシウム拮抗薬など)への変更を検討する
- 降圧薬はそのままで、ED治療薬を併用する
- 生活習慣の改善で降圧薬の必要量そのものを減らすことを目指す
相談するときは、いつ頃からEDの症状が出たか、薬を飲み始めた時期との前後関係、症状の程度を具体的に伝えると判断がしやすくなります。
「高血圧だとED治療薬は飲めない」は誤り
ネット上には「高血圧の人はED治療薬を服用できない」という説明が見られますが、これは正確ではありません。
正しくは、降圧薬などで血圧が管理できていれば、多くの場合ED治療薬(PDE5阻害薬)を使用できます。複数の降圧薬を服用中の患者でも安全に使用できたとする臨床試験の報告があります。
使用できないのは、次のようなケースです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 絶対に併用不可 | 硝酸薬・NO供与剤(ニトログリセリン、硝酸イソソルビドなど)。血圧が急激に下がり、生命に危険が及ぶ可能性があります。舌下錠・貼付剤・スプレーなど剤形を問いません |
| 使用できない血圧 | 治療により管理されていない高血圧(安静時の収縮期血圧が170mmHgを超える、または拡張期血圧が100mmHgを超える)、および低血圧(血圧90/50mmHg未満) |
| 併用に注意 | α遮断薬(降圧薬・前立腺肥大症の薬)。血圧が下がりすぎる可能性があるため、服用間隔や用量の調整が必要になることがあります |
| 併用に注意 | 一部の抗真菌薬・抗菌薬・HIV治療薬など、薬の代謝に影響する薬剤 |
狭心症の治療を受けている方は特に注意してください。
普段は硝酸薬を使っていなくても、発作時の頓用薬として持っている場合があります。「今は飲んでいない」ではなく「持っている」時点で必ず医師に申告してください。
ED治療薬自体にも軽い降圧作用がある
PDE5阻害薬は陰茎の血管に作用しますが、全身の血管にも軽く働きます。シルデナフィル服用時に、収縮期血圧が平均で6〜8mmHg程度、拡張期血圧が4〜5mmHg程度低下したとする報告があります。
この程度の低下は、血圧が管理されている人では通常問題になりにくいとされています。ただし個人差があり、めまいやふらつきが出た場合は医師に相談してください。
薬ごとの効き方や持続時間の違いは、DMMのバイアグラは何種類?1錠あたりの用量・料金・注意点で整理しています。
血圧とEDを同時に改善する生活習慣
高血圧とEDは原因を共有しているため、生活習慣の改善は両方に効きます。
減塩と食事の見直し
日本高血圧学会は、高血圧の方の減塩目標を1日6g未満としています。かけ醤油をつけ醤油に変える、麺類の汁を残す、味噌汁を具だくさんにして汁を減らす、といった置き換えが現実的です。
あわせて、野菜・果物・海藻・大豆製品・魚を増やし、揚げ物や脂肪の多い肉、加工食品を控える食べ方が推奨されています。野菜や果物に多いカリウムには、ナトリウムの排出を促す働きがあります。
※腎機能に低下がある方は、カリウムの摂取制限が必要な場合があります。自己判断で増やさず、主治医に確認してください。
有酸素運動
ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動を、週3〜4回、1回30〜40分程度行うことで勃起機能の改善が期待できるとする研究レビューがあります。強度は「会話ができる程度」が目安です。
体重・睡眠・禁煙・節酒
- 体重:現在の体重から5〜10%減らすだけでも、血圧低下の効果が期待されています
- 睡眠:1日7〜8時間が目安。睡眠不足はテストステロンの低下と関連する報告があります
- 禁煙:喫煙は血管の内皮を直接傷つけます。血管の健康という点で影響が大きい要素です
- 節酒:飲みすぎは血圧を上げ、勃起にも影響します
なお、筋力トレーニングは男性ホルモンの観点では推奨される一方、高い負荷では一時的に血圧が上がります。高血圧がある場合は、息を止めて力むような強度は避け、主治医に相談してください。
EDをきっかけに血圧・血糖・脂質を確認する
EDが続いている場合、それ自体への対処と並行して、血管の状態を確認しておく価値があります。
前述のとおり、陰茎の動脈は心臓の血管より細く、動脈硬化の影響が先に出やすい部位です。EDが「まだ自覚症状のない血管の変化」を先に知らせている可能性があります。
血圧・血糖値・脂質(コレステロール、中性脂肪)の測定は、いずれも保険診療で受けられます。一方で、EDに対するED治療薬の処方は自由診療です。この費用の線引きについてはED治療はなぜ保険適用外なの?例外の条件と費用を抑える方法で詳しく解説しています。
受診と相談のしかた
高血圧の治療を受けている場合、EDの相談先は次のように整理できます。
- 降圧薬の変更を検討したい → 血圧を診てもらっている主治医に相談する
- ED治療薬を使いたい → 泌尿器科、またはオンライン診療
どちらの場合も、服用中の薬をすべて正確に伝えることが最も重要です。お薬手帳を持参する、あるいは撮影した画像を用意しておくと確実です。
対面での相談に抵抗がある場合、オンライン診療という選択肢もあります。ただし服薬状況の申告は対面以上に重要になるため、正確に伝えてください。実際の流れや注意点はDMMオンラインクリニックのED治療の口コミ・評判、費用はDMMオンラインクリニックのED治療の料金まとめにまとめています。
海外の通販サイトなどで個人輸入されるED治療薬には偽造品が多く流通しています。有効成分が含まれていない、逆に過量に含まれているといった健康被害が報告されており、血圧の薬を服用中の方にとっては特に危険です。国内未承認の医薬品による健康被害は、医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
よくある質問
Q. 高血圧だと必ずEDになりますか?
A. 全員がなるわけではありません。ただし高血圧のある男性はEDのリスクが約2倍という報告があります。血圧を適切にコントロールし、生活習慣を整えることでリスクを下げられます。
Q. 降圧薬を飲み始めてからEDになりました。薬をやめてもいいですか?
A. 自己判断での中止は避けてください。血圧のコントロールが崩れると脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まります。まず主治医に相談し、種類の変更やED治療薬の併用を検討してください。
Q. 高血圧の薬とED治療薬は一緒に飲めますか?
A. 多くの降圧薬とは併用できます。ただし硝酸薬(狭心症の薬)とは絶対に併用できません。またα遮断薬とは血圧が下がりすぎる可能性があるため調整が必要です。服用中の薬をすべて医師に申告してください。
Q. 血圧がどのくらいだとED治療薬を使えませんか?
A. 治療により管理されていない高血圧(安静時の収縮期血圧が170mmHgを超える、または拡張期血圧が100mmHgを超える)や、血圧90/50mmHg未満の低血圧では使用できません。まず血圧の管理を優先することになります。
Q. ED治療薬を飲むと血圧が下がりすぎませんか?
A. 収縮期で6〜8mmHg程度の軽度な低下が報告されていますが、血圧が管理されている方では通常問題になりにくいとされています。めまいやふらつきが出た場合は医師に相談してください。
Q. 薬を使わずに改善する方法はありますか?
A. 減塩、野菜中心の食事、週3〜4回の有酸素運動、減量、禁煙、節酒、十分な睡眠は、血圧とEDの両方に良い影響が期待できます。特に軽度の場合、生活習慣の改善だけで変化がみられることもあります。ただし効果には個人差があります。
まとめ
- 高血圧のある男性はEDのリスクが約2倍という報告がある
- 原因は「血管の内皮障害・動脈硬化」と「降圧薬の副作用」の2系統
- 降圧薬でも、利尿薬や従来型β遮断薬は影響が出やすく、ARB・カルシウム拮抗薬・ACE阻害薬は影響が少ないとされる
- 降圧薬の自己判断での中止は危険。まず主治医に相談する
- 「高血圧だとED治療薬は飲めない」は誤り。血圧が管理できていれば使えることが多い
- ただし硝酸薬との併用は絶対に不可。α遮断薬は要注意
- EDは心血管疾患の早期警告サインになり得る。血圧・血糖・脂質の確認を
EDは生活の質に関わる問題ですが、その背景にある高血圧は生命に関わります。「恥ずかしいから」と両方を放置してしまうことが、最も避けたい状態です。
参考文献
- 日本性機能学会・日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン」https://www.jssm.info/guideline/
- 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」https://www.jpnsh.jp/guideline.html
- 日本泌尿器科学会https://www.urol.or.jp/
- 厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html
- 厚生労働省「医薬品等の個人輸入について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kojinyunyu/index.html
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医薬品副作用被害救済制度」https://www.pmda.go.jp/relief-services/adr-sufferers/0001.html
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医療用医薬品 添付文書等情報検索」https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/